第41回美術鑑賞会 ―国宝「燕子花図屛風」を観賞―【実施報告】
4月17日(水曜日)お馴染みの美術好きが10名、根津美術館に集まりました。
今回は、尾形光琳筆の国宝「燕子花図屛風」の鑑賞です。
根津美術館は、都会の真ん中にありながら「都心の森に溶け込む美術館」とも言われています。隈研吾氏による本館は和の趣を基調とし、美術館の奥には起伏に富んだ広大な日本庭園もあります。池の周りには茶室が点在するなど、趣に富んだ景観をなしています。
まずは柏原顧問による解説。いつものことながら、説明を受けてからの鑑賞はひと味もふた味も違います。顧問の事前準備の姿勢には改めて敬服です。
さて館内へ入ると仏像がお出迎え。横目で見ながら展示室へ、ここが今回のメインです。まず和歌と物語がテーマの展示では、「伊勢物語」や「扇面歌意画巻」などの作品が目を引きました。続いて草花模様の屏風と襖がテーマの展示へ。
ここに一段と映えた国宝「燕子花図屛風」がありました。尾形光琳筆の六曲一双屏風で、絵とデザインは極めて印象的です。群青の青を厚く塗り、花弁はふっくらとした様子の燕子花の群生、そしてリズミカルな配置でこれぞ日本美術と思わせる作品です。背景の金箔を含め、花の群青、葉の緑青色の三色だけで表現するとは、見事という言葉以外にはありません。
燕子花が描かれた作品といえば、光琳晩年の作である「夏草図屏風」もありました。対角線上に配置された草花に、こちらは左下に燕子花が少し描かれています。「燕子花図屏風」とは異なり、花びらは随分ほっそりとし、むしろ実際の燕子花に近い描写で写実的な作品になっています。
続いて「四季草花図屏風」。ここには俵屋宗達の工房印が捺されていました。70種近くの草花が、春夏秋冬の順に描かれています。「燕子花図屏風」のはっきりとした描写とは対照的に、すべてに輪郭線を用いない「没骨」の技法で描かれています。濃淡の色彩が実に美しく表現されており、これだけ多くの草花を一双の中に無理なく配置するなど、デザイン性にも優れている作品と言えましょう。
今一つ、当時の社会を描いた「伊勢参宮道中図屏風」にも見とれました。京都からお伊勢参りの道中を描いた六曲一双の屏風で、17~18世紀の各地の名跡、風俗が所狭しと描かれています。この作品の中には職人が絵を描いている風景がありました。その前を買った絵を広げながら歩いている旅人。これは京都から大津の街道沿いに発展した「大津絵」の描写とのこと。今回は実際の「大津絵」も、同時に展示されていました。
代表的な屏風図を紹介してきましたが、一言では言い表せません。機会があれば足を運んでいただくのがベスト。「百聞は一見にしかず」です。なお他の展示室で興味を持ったのは、アンデスの染織。ペルーの貴重な刺繍で造形も豊かで、根津美術館は意外な作品も所蔵していることがわかりました。
そして今一つの見どころは庭園です。三々五々散策しながら、心地良い時間を過ごした後、皆さん集まって恒例のティータイム。庭園入り口にある喫茶室で、皆話始めたらなかなか終わりません。気づけば2時間弱もの時が過ぎていました。気の合う仲間との話題の尽きないひと時もこの会の良さです。次回の鑑賞会は秋ですが、皆さん楽しみに帰宅となりました。
(平林 記)