第37回美術鑑賞会「岡本太郎展」報告【実施報告】
11月16日(水)、第37回千葉県支部の美術鑑賞会が東京都美術館で開催された。
「芸術は爆発だ」の名言を残した「岡本太郎展」である。
当日は本展に関心の深い支部会員数名が参加され、岡本太郎の世界を堪能しました。
入館すると照明の落とされた部屋に現れたのは赤や青・緑の原色で描かれた巨大なキャンバス。それを切り裂くような黒い線。本物の「岡本太郎」を見るのは今回が初めて。
想像していた以上の迫力と一瞬何か恫喝されるような気分。
太郎は「対立要素を作品に共存させるべき」と云う対極主義を唱えていた。
その代表作「森の掟」は深い森の中に鯨を思わせる巨大な怪獣。怪獣は巨大な権力でそのお腹にはチャック、そのチャックを開けると・・・解説文を読んでも何とも不可解。しかし画面からは豊かな色彩と軽やかなフォルム。何か楽しくなるような雰囲気。
そんな作品群の中で最大の作品は「明日への神話」。原爆が炸裂する瞬間を描き、この禍禍しいモチーフは「生と死は隣り合わせである」ことを物語っている。本物は長さ50m、高さ5,5mの大作。会場ではサイズダウンしたレプリカ。
この作品はメキシコオリンピックにあわせ、現地ホテルからの依頼で制作されメキシコに送られるもホテルは倒産。作品は行方不明に。30年後メキシコの倉庫で発見され、日本に送り返され修復、数奇な運命を経て現在渋谷の回廊に設置されている。
会場にはユーモラスなオブジェや不可解な彫刻。これらはすべて1970年の大阪万博の「太陽の塔」の習作のように見える。
万博は高度成長の中、華々しい近代文明の成果を詠いその中心にあったのがお祭り広場。その広場を覆う丹下健三氏設計の巨大な銀傘。太郎は周りの反対を押し切り、その大屋根に穴をあけ「太陽の塔」を設置。これぞ太郎の云う空極の「対極主義」では。近代文明と大自然の中から生まれ出た巨大な怪物のような塔の対極。既成概念にとらわれるのを嫌い、オリジナリティや革新性を愛し、チャレンジ精神旺盛な「太郎」の真髄ではなかろうか。
それに引き替え、背中を丸めポケットに手を突っ込み、スマホ片手に吉野家の牛丼をほおばり、海外留学を嫌い、内向きな今の若者達へ、あるいは世界各国からあらゆる分野で世界から周回遅れの日本社会への警鐘が太郎の作品から聞こえるような気がする。2025年の大阪万博には「太郎」は出現するのだろうか。
(記 顧問・柏原博人)