美術鑑賞会 日本現代美術私観・高橋龍太郎コレクション【実施報告】

Posted by on 11月 20, 2024 in 新着情報
美術鑑賞会 日本現代美術私観・高橋龍太郎コレクション【実施報告】

今回の東京都現代美術館で開催されている「日本現代美術私観・高橋龍太郎コレクション展」はこれまでの美術鑑賞会とは「趣きの異なる展覧会への挑戦」でした。
いつも美術鑑賞会を企画主催して頂いている柏原さんが病気療養のため、急遽欠席。いつもの「手の込んだお手製の説明書」を手にして案内していただくことが出来ず、とても残念でした。
まず、「収集家高橋龍太郎」とは?「高橋龍太郎コレクション」とは?について
高橋龍太郎は、団塊の世代(1946年生まれ)の始まりとして育ち、全共闘運動に参加、そして挫折を経験し、のちに精神科医として地域医療に尽力する。1990年代半ばより日本の現代美術のコレクションを開始し、そのコレクションは約3000点余りにのぼり、個人コレクターとしての域を凌駕するスケールです。
今回はその中から選りすぐった作品が展示されています。
コレクションの代名詞である「1990年代から2000年代にかけての作品」はもちろん、「東日本大震災以降に生まれた新しい時代の感覚の変化を映し出した作品」も紹介されています。
次に作品の展示は1部〜6部に構成されています
①胎内記憶
彼が収集を本格的に始める1990年代半ばまでの、彼が若き日に影響を受けた作家たちの作品が展示されている。
(草間彌生、久保守、荒木経惟、赤瀬川原平、横尾忠則、他 作品50点)
②戦後の終わりとはじまり
戦後が終わり、1990年代半ばまで、この間、日本の文化や社会に対する批評性を持った作家たちが出現し、彼らの作品が高橋の芸術への憧れを大いに刺激した。
(村上隆、会田誠、山口晃、風間サチコ、千葉和成、他 作品66点)
③新しい人類たち
芸術を通して人間の諸相に触れたいという精神科医としての目を通して、深化していく高橋コレクションを紹介している。
(奈良美智、森靖、加藤泉、町田久美、鴻池朋子、できやよい、他 作品42点)
④崩壊と再生
2011年の東日本大震災、福島第一原発事故により大きな感覚の変化をもたらされた作家たちの震災後の日本社会に対する風刺や新しく生み出された表現を紹介している。
(千葉和成、竹川宣彰、志賀理江子、小谷元彦、弓指寛治、他 作品21点)
⑤「私」の再定義
東日本大震災以降、高橋のコレクションには、その主体である「私」の存在を問い直すような作品が目立つようになっていく。これらの新しい感覚を印づける作品(絵画、インスタレーション、陶芸など)を紹介している。
(岡崎乾二郎、やんツー、大山エンリコイサム、谷保玲奈、川内理香子、他 作品32点)
⑥路上に還る
近年高橋を引き付けているのは、「路上―ストリート」から世界をまなざし、制作する作家たちです。かつて学生運動に身を投じた自らにとって、これらの作品との出会いは「前衛の記憶」を呼び戻すきっかけとなりました。若い芸術家の作品を紹介しています。
(鈴木ヒラク、松下徹、金氏徹平、DIEGO、藤倉麻子、里見勝蔵、他 作品23点)

これまで経験した美術鑑賞では、その色彩の美しさ、形や線の優美さなど、に心和まされてきました。だから理屈なんて要りません。感じるだけでその作品を受け止められたように思い込んでいました。まさにこれまでのように鑑賞すれば良いと思っていた私に、今回の「高橋コレクション展」は衝撃でした。
作品一つ一つに向き合うと、私は心の中でその作者に「あなたは何を言いたいの?何を伝えたいの?」と問いかけているんです。作品を見ただけではその作品を感じることが難しく、学芸員の方が書かれた作品の説明文を読み、作品が制作された時代の社会的政治的背景、作者の生い立ち環境などを知ってはじめてその作品に向き合うことが出来るんです。社会に対する「怒り、不満、哀しみ、不条理、疑いなどなどの負の感情」を作品を通じて強く訴えているのです。
この批評精神が溢れる現代の作家たちの作品は、「心」で感じるのではなく「頭」で考えそして再び「心」で感じる、そうして作品に接するという、そんな頭と心をフル回転させた一日でした。
私は「美しいもの」を観て、単純に「美しい」という思いを作品から心穏やかに頂きたいと思いました。
最後は参加者女性三人で、疲れた頭を癒すため素敵な景色の美術館内でお茶を楽しみました。2024/10/16

村越満知子 1974卒法 記