第32回美術館賞会/コートールド美術館展 【実施報告】
11月20日(水)、東京都美術館で開催中のコートールド美術館展に行ってきました。日に日に秋めいて、上野の森も3分の1程度色づいていました。そして、言い古された言葉ですが、「芸術の秋」に15人集まりました。
ここでコートールド美術館について小解説します。まずコートールド(1876-1947)は人名で、レーヨンなどで財を成した大富豪です。彼は社会貢献に熱心で、芸術のすばらしさを民と分かち合いたいとの気持ちから、1920年代当時あまり評価されていなかった印象派・ポスト印象派の作品を、卓越した審美眼でコレクトしました。1932年、ロンドン大学に美術研究所の創設が決まると、彼はコレクションを寄贈、研究所はコートールド美術研究所と名付けられ、その展示施設がコートールド美術館になりました。
本来コートールド美術館の作品は門外不出とされていましたが、今回はたまたま美術館の改修工事の為、絵画・彫刻60点の来日が実現したものです。
さて、美術鑑賞部担当の柏原理事から恒例のレクチュアーを聞き、いよいよ入場です。待ち時間は20分。やっと中に入ると、最初のテーマは<画家の言葉から読み解く>で、いきなりホイッスラーの「少女と桜」。日本への配慮? 続いてゴッホの「花咲く桃の木々」、そしてモネ、セザンヌと続く。とくにセザンヌは9点で、風景画「ジャス・ド・ブッファンの高い木々」、「大きな松のあるサント=ヴィクトワール山」、静物画「キューピッドの石膏像のある静物」などの一方で、「カード遊びをする人々」、「パイプをくわえた男」と人間臭い味も出していました。
次のテーマは<時代背景から読み解く>で、ブーダン、マネ、モネ、ピサロ、シスレーなど風景画が続く。ルノアールあたりから趣が少し変わる。ルノアールの「靴紐を結ぶ女」、「桟敷席」、ドガの「踊り始めようとする踊り子」「舞台上の二人の踊り子」、そしてマネの「草上の昼食」、「フォリー=ベルジェーネのバー」といずれも人間が主役の作品が並ぶ。またいきなりロートレックが出てきたのもサプライズ。
3つ目のテーマは<素材・技法から読み解く>で、ドガ、セザンヌのあと、スーラが5作品。橋、釣り、舟、海辺など水にちなんだ作品が多い。モディリアーニの「裸婦」もお馴染みだ。さらにスーティン、ボナール、ドガと見た後、彫刻のロダンが現れる。日本なのでやはり「花子」に目がとまる。展示のラストを飾るのは、ゴーガンです。「ネヴァーモア」など4作品の展示でしたが、いずれも豪快でゴーガンらしさに満ち溢れていました。
見終わった後は、美術館2Fの「ミューズ」でコーヒーブレイク。今日の感想を語り合ったりしながら、一息入れて解散しました。皆バラバラに分かれた後、一人(K.J)で上野公園を散策。夕暮れ前でしたが、色づき始めた木々を少し撮って帰宅しました。
(文・写真 K.J)