第25回美術鑑賞会「ボストン美術館展」を観て 【実施報告】
高く澄み渡った空、10月4日、上野の山の「東京都美術館」に集まったのは10名。幹事の簡単な説明のあと会場へ。まず眼に飛び込んできたのはエジプトの象形文字。石に刻まれ三千年の時を過ごしながら現代にも通じる新鮮さの秘密はなんだろうか。
中国からは長い巻物にのたうち廻る9匹の龍。それぞれは小さな絵柄ながら圧倒的な迫力を感じます。
江戸時代の巨大な涅槃図は英一葉の作。釈迦の入滅に悲しむ菩薩や羅漢。嘆き喚く動物たちの姿は、悲しみを通り越して何かユーモアさえも感じさせます。
フランス絵画からは印象派の代表ゴッホ。アルルに移り住むもモデルを雇う金も無く、近所の郵便配達に頼んだ作品「ルーラン夫妻」。二人の目線からは何を感じますか。
脱ヨーロッパを試み、もがき苦しんだ米国画壇。オキーフの「グレーの上のカラ・リリー」にその兆しを感じ、戦後アクションペイングやポップアートを生み出し、新ジャンルを確立した。
写真部門はその起源から収集が行われ、その当時の米国の巨匠アンセル・アダムの「白い枝・モノ湖」は現代写真に通じる作品である。
現代美術では日本の新進作家・村上隆の「If the Double Helix Walk Up・・・」があり、氏は昨年巨大な「五百羅漢像」を発表、話題を呼んだ。ウオーホールの作品「ジャッキー」はシルクスクリーンの初期のものである。
これらの作品はすべて個人からの寄進・寄付により収集され、それぞれの作品はボストンの人々の優れた先を見通す審美眼で選び抜かれたものです。永きに渡る彼らの努力には頭の下がる思いです。「美術品は皆のもの」と云う美術館の哲学を強く感じた展示会でした。 (文・柏原博人)